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4督すべき評議員会は法律上設置が任意であり、理事会は厚生労働省の通知により設置されるなど法的な根拠が乏しいものとなっています。 これは非営利法人に関する一般法である平成20年12月1日施行の「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」により設立された一般社団法人及び一般財団法人における運営組織などと比較して、社会福祉法人に求められているガバナンスが確立されているとはいえない状態です。 このような中、一部の社会福祉法人では、理事長による専断的な経営や実質的な同族支配による不適切な運営などガバナンス上の問題が生じています。② 経営情報の透明性の問題 社会福祉法人は、補助金等の公的資金と寄附者からの贈与を基に設立され運営を行うことから、その受託責任を明確にする必要があります。このため、平成23年に新たな社会福祉法人会計基準が制定され、平成24年度以降この基準による財務諸表の作成が行われ、さらに平成26年度からはその一部についてインターネットによる公開が行われています。 しかし、その財務諸表の正確性は外部の専門家により担保されているわけではなく、また役員の報酬に関する事項など財務諸表以外の重要な情報の開示がなされていないなどの問題が指摘されています。 さらに、情報公開に消極的な法人も散見され、厚生労働省の通知ではなく、法律的な枠組みの中で経営情報の透明性の確保が必要とされてきています。③ イコールフッティング論と剰余金の問題 社会福祉法人が担う社会福祉に関する制度自体が近年大きく変わりました。 具体的には、平成12年から始まった介護保険制度を皮切りに、平成15年の障害者福祉における支援費制度の導入、平成18年の障害者自立支援法の施行、さらに平成27年からの子ども・子育て支援法に基づく給付費制度の導入と、社会福祉事業法制定時の行政が福祉を必要とする者に対して行う行政処分としての措置制度から福祉の利用者との契約制度へと移行してきました。 これに伴い、株式会社をはじめとする民間事業者が社会福祉事業である居宅事業等へ参入することになり、多様な福祉ニーズへの対応と事業の効率化が進められることになりました。 一方で、これらは社会福祉法人と事業の競合が生じることになり、これに対して、多くの社会福祉法人も経営努力を行って、経営の効率化を進めました。しかし、このことがはからずも一部の社会福祉法人において多額の剰余金が生じる結果となってい

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