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省しなかった姉が、今までの長男一家の苦労など一顧だにせず、2分の1の法定相続分を要求したため、代償金を支払うことができなかった長男は、姉と2分の1ずつの共有相続となった自宅を売却し、長年の住居を後にせざるを得なかったというやりきれない事例がありました。 また、売上規模100億円超の会社の創業社長が相続税対策を考え、自己の所有する自社株式を長男と二男に毎年贈与していた結果、生じたもめ事にも驚きました。 リスクを避けるよりも新規事業を開拓したい二男は、歴史を尊重しながら少しずつ成長していく戦略を重視する社長(父親)と意見が合わず、会社を飛び出しました。その後、二男は外資系の投資会社の取締役に抜擢されて就任し、容赦なく、その外資系投資会社に自分の所有する持株を譲渡したいと、会社に対して承認の請求をしてきました。社長は激怒し、譲渡承認を否決すると息巻きましたが、そうなると会社が二男の所有する株式を買い取らなければなりません。買取価額の合意についてさらにもめ事が拡大すると考えた長男は、社長を説得し、その譲渡を承認することにしました。現在のところ、二男から外資系投資会社への株式の譲渡は行われていないようで、彼は株式を現金化したかったのではないかと、長男は推測しています。しかし、その外資系投資会社がいつ株主として出現するか分からず、総務部門は株主対策に大わらわです。 二男は自社株式の贈与の際に贈与税を払っているにもかかわらず、資金を手にすることもできず、親子の断絶はますますひどくなり、双方とも悩みは深まる一方です。後継者である長男も、現在会社の過半数の株式を所有する父親の相続発生時のことを考えると、どうしたらいいのか分からず、お手上げ状態です。 このように、相続人間における遺産分けの問題、相続せざるを得ないが換金性の低い不動産や事業用資産にかかる多額の相続税など、後継者にとっては相続が発生すれば解決しなければならない問題が山積みです。 「家」を中心とした相続を思い描く高齢化してきた親世代と、戦後教育で平等観念の強い子世代。まさに相続に関する悩みの尽きない時代に突入したといえるのではないでしょうか。 歴史を知れば今が分かるといいます。第1章では、日本の相続の歴史と現行の相続制度について説明します。第1節均分相続の現代における家の承継は困難極まる■

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