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「明治三十二年商法」に引き継がれ、幾多の改正を経て、現行の商法につながっています。おわかりでしょうか。すべては一本の線で結びついています。つまり、わが国の商法の歴史的な成り立ちを見れば、現行商法が定める「記帳と決算書作成義務」は、「一六七三年フランス商事王令」にまで遡らない限り、その本質を理解できないということなのです。ドイツの有名な会計学者であるレフソンは、その著書の中でこう言いました。「わがドイツ商法は、なぜ、外部に報告する義務がない個人事業者にまで年一回の決算を義務付けているのか? それは自己報告のためである」。さらにレフソンは「記帳と年度決算書の作成は、日常の報告のために必要であり、かつ、企業倒産を防止する意図がある」と言っています。つまり、決算書は誰に報告するものでもない、倒産を防止するため経営者が自らに報告するために作成するものである、ということなのです。また、ドイツ税法の権威者、クルーゼ教授も「だらしない(帳簿の)記帳は破産者の特徴である」と述べています。いかがでしょう。ここまでの説明をご理解いただければ、わが国会計学が唱える「企業外部の利害関係者に経営状況を報告するための会計を財務会計という」という定義だけでよいかどうか、自ずと判断できると思います。第1章 基礎編     (2)決算書には倒産防止の意味がある31以下 省略

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