のですから。世界的に見ても、「中小企業のための会計学」という研究はほとんど存在していないと言っても過言ではありません。こうした背景があるために、中小企業経営者にとって記帳や決算は「税務申告だけのために必要な業務」という位置づけになってしまったのでしょう。このような「税務署に申告書を提出しなければならないから、仕方なしに記帳をし、決算書を作成している」という国民的な誤解の原因は、相当根深いところに存在しています。日本という国全体に取りついている宿痾あ(=長い間治らない病気)と言っても過言ではありません。しかし、過去に遡って会計という仕組みの成り立ちを解明すれば、この大いなる誤解も魔法のように解けてしまいます。今から、それを証明してみましょう。皆さんの普段のお仕事とは一見かけ離れた歴史のお話が続きますが、どうかじっくりとお読みください。世界で初めて、国家的規模で商人に記帳や決算書の作成を義務づけたのは一六七三年の「フしゅく会計の歴史から本来の役割を探る第1章 基礎編 (1)死刑を担保に記帳を迫ったフランス29
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