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経験論による考察 ロックはイギリス経験論の父とよばれています。彼によれば、人間の知性は「ぬぐわれた石盤(白紙、タブラ・ラサ)であって、経験以前に生得(本有)観念を持つことはない。すべての知識は知覚と内省という後天的な経験を通じて「観念」として獲得され、書き込まれる」とされます*1。 『教育に関する考察』(Some Thoughts Concerning Education, 1693)は、ロックがオランダに亡命中(1683-1689年)にエドワード・クラークに宛てて、この息子の教育指針として書き送った手紙を基礎に置いています*2。ロックは教育に関して215の項目に分けて考察を加え、「ここでは教育の主要目標と目的に関して、若干の一般的見解のみを、しかも一人の紳士の息子のために、立案したものを述べたのであって、その息子は当時非常に幼かったので、わたくしはただ白紙(white paper)、あるいは好きなように型に入れ、形の与えられる蜜ろう(wax)に過ぎないと考えました*3」と述べています。ここに経験論に基づく論理展開を読み取ることができます。会計で会社を強くする 簿記・会計先覚者の 金言集・解説319*1 服部(1967)12頁。*2 Locke(1693)p.101. 服部訳(1967)324頁を参照。なお服部訳(1967)ではmerchants’ accomptを「簿記」とするが、本書では「商人簿記」の方が原文の意味に沿うと判断した。*3 Locke(1693)p.101. 服部訳(1967)324-325頁を参照。I would therefore advise all gentlemen to learn perfectly merchants` accompts, and not to think it is a skill that belongs not to them,because it received its name from, and has been chiefly practised by men of traffic.破綻をさらに大きくする人が多いことは疑いえません。そこですべての紳士が商人簿記を完璧に学ぶとともに、「商人簿記はその名称が商人から由来し、主として商人によって実践されているので、自分たちに関係のない技術である」と考えないように忠告したいと思います*3。解説

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