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ーは、商法の祖と呼ばれ、同法典は、商法の基礎となったばかりでなく、その後「静態論」と呼ばれる会計思考の基礎となりました。簿記の秩序性(ordre) 『完全な商人』の第1編第33章は「事業遂行において相当な取引をしている小売商人が守るべき秩序(ordre)と、彼らの簿記手法について」です。この章でサヴァリーは、簿記の秩序性について詳細に解説しています。決算書の報告先は経営者自身(自己報告) 決算書の本質的な報告先は、投資家や株主などの利害関係者ではなく、経営者自身(自己報告)です。サヴァリーは、「会社を結成していないから、いかなる財産目録も作成するには及ばないという人たちがいたなら、馬鹿げてはいないだろうか。……、整理、調整444444444444ことが義務づけられていなするために、自分自身に説明し報告するいだろうか」(傍点は坂本)と喝破しています。これは格別に重要な指摘です。商法典は、利害関係者がいない事業者にも決算書作成義務を課しています。その理由は、経営者への自己報告による健全経営の遂行にこそ簿記会計の本質的な目的があるからです。 サヴァリーの商業論の特質は商業志望者、商業従事者に指針を与えるという強い教育的配慮で書かれています*3。法律学者であるサヴァリーは商業帳簿の本質的機能にも精通していたのです。会計で会社を強くする 簿記・会計先覚者の 金言集・解説217ジャック・サヴァリー(Savary, Jacques 1622-1690年)フランスのアンジュー地方のドイレに生まれる。ルイ14世のもと、財務総監コルベールの命を受け、商法典編纂に参画し、その起草に当たった。かくしてなったのがフランス商事王令である。1675年彼は本商事王令の注釈書Le Parfait Négociant(『完全な商人』)を出版した。これは以後幾多の版を重ね、独、英、伊、蘭の各国語に訳され、商業学の古典となった*4。*1 岸(1988)196頁。 *2 岸(1988)220頁。 *3 岸(1988)216頁。 *4 岸(2007)527頁を参照。

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