sample57244
18/24

商業帳簿の本質的な目的を論じたサヴァリー サヴァリーは、王令の注釈書として商事王令法典化の2年後の1675年に『完全な商人』を著しています。そこにおいてサヴァリーは、(1)国民経済における法による秩序の維持と、(2)企業経営の2つの側面から、商業帳簿を論じ、前者にあっては、債権・債務関係の立証たる帳簿の証拠能力に、後者にあっては経営管理に、これを関わらしめています*2。 このことからも、商法の商業帳簿規定の本質的な目的が、「帳簿の証拠力の定立」と「商人への自己報告による健全経営の遂行」の2点にあることが理解されます。当時のフランスは、コルベールによる重商主義(マクロ経済政策)の推進と併せて、商業帳簿を武器にして「会計で会社を強くする」というミクロ経済政策も同時に採用していたのです。 サヴァリー法典は、その後1807年にナポレオン法典に引き継がれ(死刑の条項は同法典では削除)、ヨーロッパ諸国の商法制定の模範とされ、やがて日本の商法にも影響を与えています。サヴァリとにあります。同商事王令は、立法の理由を詳細に述べた前文と12章122条から成り、商業帳簿規定は第3章に存在しています。 同法典の記帳義務は任意規定ではありません。破産時に「正規の帳簿」を提示できない者は破産を宣告されるばかりでなく、詐欺破産者とみなされ(第11章「破産及び破産犯罪」11条)、死刑に処せられる(同章12条)、という厳しいものでした。つまり、死刑を担保にして、商人に「正規の帳簿」の備え付けを間接的に義務づけていたのです。 ここで「正規の帳簿」とは、第3章「商業帳簿規定」の3条に規定される「商事裁判官等による署名や各紙葉への花押・付番」がなされ、かつ、5条に規定される「日々の記帳」・「連続した記帳」・「空白なき記帳」・「余白への記載なき記帳」という記帳条件を充たした帳簿を意味しています。16

元のページ  ../index.html#18

このブックを見る