sample57244
15/24

「適時の記帳」と「経営状況の適時の把握」 パチョーリは、「物事を適切に、その場で整理」することを求めています。記帳の適時性です。そうしなければ「すべての業務は最大の骨折りを要するばかりか混乱の中に陥る」ことになり、「自らの統制」ができなくなるからです。「適時の記帳」を前提とした複式簿記によって、経営者は自らの「経営状況の適時な把握」が可能となります。 わが国における『スムマ』研究は世界でも最高水準にあると思われますが、残念なことに、それらの研究は複式簿記の記載や形式に関する領域に集中し、「複式簿記は経営に不可欠な手段であること」、「秩序正しさが、記帳及び財産目録作成の基本原理であること」、「スムマには、各種の記帳条件が記述されていること」などの論究が欠けているようです。のルカ・パチョーリの『スムマ』に求める見解があります。それは『スムマ』において一貫している「複式簿記の秩序性(Ordnung)」によるものであると考えられます。会計で会社を強くする 簿記・会計先覚者の 金言集・解説113ルカ・パチョーリ(Pacioli, Luca 1445-1517年)ルネサンス期のイタリアの有名な数学者であり、かつ世界最初に出版された複式簿記解説文献の著者である。中央イタリアのサン・セポルクロに生まれる。1464年、当時のイタリア商業の中心地ベネチアへ行き、大商人アントニオ・デ・ロンピアージの3人の息子の家庭教師となり、そのとき商業実務に関する知識を吸収する。フランシスコ会の修道士。1494年に主著にあたる数学書『スムマ』を出版する。このなかに「計算及び記録に関する詳説」は、世界最初の簿記文献として名高い。米国の会計学者であるリトルトン(Littleton,A.C.)は、パチョーリを近代会計学の父として高く評価している*1。*1 片岡(2007)979-980頁を参照。

元のページ  ../index.html#15

このブックを見る