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としているように、パチョーリが「秩序正しさ」すなわち『スムマ』本文の中世イタリア語では、ordo、ordine、ordinatamente、buono ordineをもって、複式簿記(記帳と財産目録作成)の基本原理としていることです。 パチョーリは、本書はベネチア共和国のウルビノ公の臣下が商人の掟に通じ、必要事項を身につけるべく著された旨を述べ、「各人の必要に応じて本書が、計算、記録並びに勘定を通じて、各人に役立ちうるべく、正にそのためにこそ、本書に本論稿を挿入した」とし、「このために、すべての勘定と帳簿を秩序正しく[ordinatamente](ordnungsmäßigen)記帳するに十分且つ妥当な規範を与えようと思う」としています(第1章)。 そして、第1章では財産目録の模範例を挙げ「私は、自らの手で、秩序正しく[ordinatamente] (ordnungsgemäß)書いた」とし、第4章では「上記の財産目録」に「すべてよき秩序[buono ordine](guter Ordnung)に従って入念に、記載されねばならない」とし、第7章では商務官庁による認証を受ける場合には「これらは、あなたの帳簿であり、自らの取引を秩序正しく[ordinatamente](ordnungs-gemäß)」、「記載せしめていることを述べなさい」と記述しています。第13章では「あなたは、仕訳帳に、すべてのあなたの記入事項を秩序正しく[ordinatamente](ordnungsmäßig)記入した後、それを抜き出して元帳と呼ばれる第3の帳簿に転記しなければならない」とし、第33章では、「以上の事項(期中取引のこと=坂本注)が、すべて、秩序正しく[ordinatamente](ordnungsgemäß)なされ、遵守された後は」元帳に先立つ如何なる帳簿においても如何なる変更も行われてはならないとしています。この第33章の記述は「記帳の遡及的な訂正」手続きに関するものです。訂正処理をする場合は、当初の処理に遡って直接行ってはならず、事後的な訂正であることがわかるような処理をすべきであることを求めています。 ドイツでは、その会計制度の中核である「正規の簿記の諸原則」(Grundsätze ordnunsmäßiger Buchführung, GoB)概念の淵源をこ12

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