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 たとえ長年の信頼関係ができている月次巡回監査の対象関与先の経営者や元経営者の相続税の申告であっても、所得税・法人税の月次巡回監査に基づく申告書作成とは、根本的に申告の基となる情報が異なることを認識する必要があります。 相続税の申告で、被相続人が財産をどのように運用し、日常、預貯金や資金を使っていたかを相続人が全て知っているということは通常ありません。被相続人は株の売買が好きで、よく証券会社を通じて上場株式の取引をしていたということは知っていても、どの銘柄をどれだけ保有していたか、どの証券会社と取引していたかまでは知らないなどといったこともよくあります。被相続人はこの世にいないので、取引記録や日記その他の残されている情報と相続人が見聞きしたことに基づいて、相続財産を把握していく必要があります。 関与先関係者以外の相続税申告の依頼を受けた場合は、どのような経歴の被相続人かも知らない状態から始まります。 税理士法第1条「税理士の使命」の条項は、税理士が憲法第30条にある「納税の義務」の適正な実現を図るという、極めて重大な公共的使命を担うものであることを規定したものです。その意味するところは、依頼者である納税者の立場を十分に踏まえることを前提としながらも、一方的に納税者の立場に立つのではなく、また、税務当局からも独立した公正な立場において、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図るという重大な使命を果たしていくことにあります。 相続税申告においても、税務の専門家として独立した公正な立場で、被相続人の財産について真実性・適法性及び網羅性を確保し、適正な申※巡回監査とは、関与先を毎月及び期末決算時に巡回し、会計資料並びに会計記録の適法性、正確性及び適時性を確保するため、会計事実の真実性、実在性、網羅性を確かめ、かつ指導することです。32.被相続人の相続税申告の依頼者は相続人3.相続税申告における税理士の使命

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