i昨年来、原材料価格の上昇や円安の影響による物価高など大きな困難や課題が存在しています。しかし、新型コロナウイルス感染症もいよいよ収束に向かい、ポストコロナ時代への対応が必要になっています。令和5年度税制改正においては、大きな転換ともいえる税制改正が実施されています。第1の柱としては、家計の資産を貯蓄から投資へと積極的に振り向け、資産所得倍増につなげるため、NISAの恒久化と年間投資上限額の大幅な拡充が行われました。第2の柱は、スタートアップ・エコシステムの抜本的強化です。経営者の大胆な挑戦を可能とし、働き手に新たな活躍の場を提供する新たな産業の創出・育成を推進するため、スタートアップ・エコシステムが抜本的に強化されています。法人税では、オープンイノベーション促進税制がM&Aでも利用可能になるなど大幅に拡充されました。また、所得税では、エンジェル税制等が単なる課税の繰り延べから非課税化され、非課税金額上限も20億円となるなどの見直しが行われました。さらに、果敢にリスクテイクを行う人材や企業の成長を先導する人材、新たな領域へと主体的に踏み出す人材への投資の強化など、「成長と分配の好循環」の連鎖を生み出す仕組み作りのための税制も創設されています。第3の柱は、数年にわたって検討が重ねられてきた「資産移転の時期の選択により中立的な税制」です。暦年課税制度における相続前贈与の加算期間が3年から7年に延長されるとともに、相続時精算課税制度に基礎控除が設けられました。これらにより財産・資産承継の時期や在り方は大きな影響を受けることになり、早めの対策がより重要になります。第4の柱は、公平で中立的な税制の実現です。個人所得課税においては、「極めて高い水準の所得」について最低限の税負担を求める税制が創設されました。また、国際課税制度においても、法人税の引き下げ競争に歯止めをかけ、企業間の公平な競争環境の整備のための「グローバル・ミニマム課税制度」が国際合意に沿って導入されます。はじめに
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