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iii証拠法・コンピュータ会計法規・判例など広範な法領域に関わっていること、後者は主に会計学者(経営経済学者)によって広範な理論が展開されていることを明らかにした。つまり、ドイツ税理士はこれら広範な法律と会計の領域に関する職業専門家として、高い社会的地位を獲得しているのである。アメリカの公認会計士 アメリカには税理士制度はなく、公認会計士がわが国の公認会計士と税理士の総体に相当する。そして「CPAs are the guardians of financial truth(公認会計士は財務の真実性の守護者である)」(アーサー・レヴィットSEC委員長)、「Independence is an essential auditing standard(独立性は不可欠の監査基準である)」(エドワード・B・ウィルコックスAIA会長)とされてきた。 飯塚毅博士は、世界の会計人の社会的地位の変遷を歴史的に調べてみると、その集団の職業上の独立性に関する集団的自己規制、倫理規定が厳格化することに比例して、その社会的地位が向上している、との紛れもない事実が判明すると論じられる*2。つまり、アメリカにおける公認会計士の社会的地位と「独立性の堅持」には強い相関関係が存在すると指摘している。 アメリカ独立宣言にも影響を与えた思想家トマス・ペインは、「The duty of a patriot is to protect his country from it’s government(愛国者の義務は自分の国を時の政府から守ることである)」との言葉を残した*3。この言葉を体現するように、アメリカの公認会計士の独立性概念は、時の政府(規制当局)による外からの規制強化に対して、業界団体としての自主規制の強化、さらに議会による法的規制の軋轢の中で、生成され、展開されてきた。 このようなアメリカ公認会計士の独立性概念の生成の過程とその内容を明らかにすることは、わが国において税理士業務に従事する職業会計人の独立性を正確に把握するために格別に重要であると考える。飯塚毅博士が、月刊『TKC』(TKC全国会会報誌)の巻頭論文等で繰り返しアメリカ公認会計士の独立性概念および倫理規定を論攷され、その重要性を説かれたのも、このような理由からであったと考える次第である。 冒頭で述べたように、アメリカでは公認会計士による監査業務と経営助言業務等の非監査業務の同時提供をめぐって長い論争が行われ、ついに2002年にサーベンス・オクスリー法が成立したことによって監査業務と非監査業務の同時提供が禁止されるという結果に至ったことは、まだ記憶に新しい。

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