iiて設立された会計人集団であり、その創設の目的は「職業会計人の職域防衛と運命打開」とされた。「職域防衛」とは、折からのコンピュータ革命によってアメリカで大銀行が企業の財務計算受託を開始。会計事務所の顧客争奪の様相がわが国にも到来することに危機感を抱き、会計事務所の電算化徹底と併行して業務水準の飛躍的向上への集団的自助努力によって、日本の会計人の職域を守る──との意味が込められていた。 TKC全国会会則の設立理念は、その前文に明らかにされている。その要旨は「高度の職業倫理を堅持し、租税正義の実現を祈念し、国家と社会と働く者とに対して正しい使命感を抱く会計人の全国的一大集団を形成する」ことである。当時の税理士への一般的な評価は、徴税当局と納税者の間に立って納税額を調整するネゴシエーター的な存在とみなされることが多かった。これに対して飯塚毅博士は、欧米の先進的な会計人に範を求め、租税法律主義の立場を貫く誇り高い会計専門職像を対置した。そしてその目指すべき理想像として、法を重んじるドイツの税理士と自主規制強化の道を歩むアメリカの公認会計士の例を挙げ、わが国の会計人に対して奮起を促した。ドイツの税理士 ドイツの会計制度は「正規の簿記の諸原則(Grundsätze ordnungsmäßiger Buchführung, GoB)の体系である」とされ、ドイツの税理士は、「GoBの守護神なのである*1」とされる。 飯塚毅博士は『正規の簿記の諸原則』(改訂版、森山書店、1983年。日本会計研究学会太田賞受賞)において、GoBが三重構造を持っていることを論証されている。その研究の中で1919年ライヒ国税通則法第208条および1977年国税通則法第158条が「帳簿の証拠力」に関する規定であること、ドイツの商法と国税通則法に規定された記帳条件(完全網羅性、適時性、正確性、明瞭性、不可変性など)と「帳簿の証拠力」には強い連動関係があることをわが国で初めて発見された。そしてわが国の青色申告制度も「帳簿の証拠力」に関する規定であると論攷された。 筆者も飯塚理論に触発され、その研究成果に理論的基礎を置いた『会計制度の解明』(中央経済社、2011年。日本会計研究学会太田・黒澤賞受賞)を刊行した。同書において筆者は、GoB概念(つまり、ドイツ会計制度)が「商業帳簿(帳簿)の法の適用局面」(法律的アプローチ)と「簿記(会計)技術適用局面」(会計学的アプローチ)から構成され、前者は商法・租税法・刑法・破産法・訴訟法・
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