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i 本書の目的は、職業会計人(税理士および公認会計士)の独立性概念を解明することにある。そのために19世紀から始まるアメリカ公認会計士の独立性概念の歴史的な展開の過程を検証している。アメリカ公認会計士の独立性概念の歴史は、端的に言えば、「会計士業界の自主規制の成功と失敗の歴史」と表現することができる。19世紀後半、イギリスから渡った会計士を中心として興ったアメリカの会計士業界は、会計および監査を主軸としつつも、税務、経営助言、システム・コンサルティング等と、時代が下るにつれて、その業務範囲の幅を広げてきた。そしてその背景には、会計士業界の自主規制と行政による規制、そして議会による法律制定という、まさに「三つ巴」(時には、学界、マスメディア、裁判所の世論を巻き込んだ「四つ巴」)の、激しい攻防があった。しかし、かろうじて会計士の独立性とその業務範囲をめぐる会計士業界の自主規制は「成功」を保ち、社会もそれを容認し、確固たる地位を築いてきたのである。 会計士業界の「失敗」として、大きく2つの出来事が挙げられる。1つは、税務444444で「税務申告書を第三者として証明する」業務(税業務に関して、独立した立場務書類の証明業務)を否定して、内国歳入庁と敵対する「依頼人の擁護者(advocates)」としての立場を選択し続けたことである。もう1つは、2001年から2002年にかけて発覚したエンロン・ワールドコムの不正会計事件である。この事件を契機として、会計士は独立性を欠如していると社会からみなされ、2002年のサーベンス・オクスリー法の成立により、経営助言、システム・コンサルティング、内部監査のアウトソーシング、一定の税務業務などの非監査業務を手放さざるを得なくなった。こうして会計士業界の自主規制は「失敗」した。以降、アメリカ公認会計士は、監査依頼人に対する非監査業務(非証明業務)の同時提供が禁止され、監査依頼人に対しては監査業務(証明業務)だけに集中することとなった。 この、アメリカにおける「会計士業界の自主規制の成功と失敗の歴史」に学ぶ意義は大きい。筆者は、職業会計人1万名超が加盟するTKC全国会の会長を務めている。TKC全国会は、1971(昭和46)年に飯塚毅博士を初代会長としはじめに

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