3 現在のアメリカの会計事務所の多くは、その起源をアメリカに定住したスコットランドおよびイングランドの勅許会計士(chartered accountants)に遡る。当時の都市の商工人名録(directories)によれば、1850年に14人の会計士がニューヨークで公共業務を提供し、4人がフィラデルフィア、1人がシカゴにいたことが明らかになっている。これらの数は1886年には、ニューヨークで115人、フィラデルフィアで87人、シカゴで31人に増え、また、同じく1886年までに、ボストンに41人、ボルチモアに20人、デトロイトに7人、ピッツバーグに6人、セントルイスに11人、ニューオーリンズに5人、サンフランシスコには40人存在していた。やがて会計士(accountants)と簿記係(bookkeepers)の集団は、多くの都市のさまざまな小さな社会で結束するようになった5。1.1888年にAAPAは会計士業界として最初の倫理規則を規定第2節 アメリカにおける会計士の夜明け(1)全米初の職業会計士団体であるAAPAの創設 1882年7月28日に「ニューヨーク市会計士および簿記係協会(Institute of Accountants and Book-keepers of the City of New York)」が設立され、その後、同協会は1886年7月16日に「会計協会(Institute of Accounts, IA)」へとその名称が変更された6。IAは1890年代において公認会計士法(CPA law)の立法に主導的な役割を果たした7(1896年にニューヨーク州議会はアメリカで最初の公認会計士法を可決した。なお1940年にIAはAIAに吸収合併されている)。 今日のアメリカ公認会計士協会(AICPA)の起源はアメリカ公共会計士協会(American Association of Public Accountants, AAPA)である。1886年12月22日のニューヨーク市における会議でその組織の名称が決定し、1887年1月17日に開催された「全体」会議で一定の役員の選任がなされ、規約草案(draft constitution)が承認された8。その後、1887年8月20日に至って、AAPAが、会計士のみで構成する全米初の職業会計士団体として正会員24人、準会員7人をもって設立され9、9月20日に登録された10。 AAPAの創設にあたっては、渡米してきたイギリス人が中心的な存在であった11。初期のAAPAは、勅許会計士協会を手本としたイギリスのクラブと
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