第 1 章2 アメリカの共和党（Republican Party）の直接の生みの親は、Aエイブラハムbraham Lリンカーンincoln （第16代大統領、在任期間：1861年3月4日−1865年4月15日）である。リンカーンがつくった共和党は、南北戦争（1861年4月12日−1865年4月9日）を経て20世紀を迎え、1930年代の初めに至るまでの70年間近く、アメリカの政治を実質的に支配していた1。70年という時間のあいだには民主党の大統領も2人出たが、それはたまたまのできごとであって、基本的には共和党が一党支配を続けた2。19世紀の後半から20世紀にかけて、アメリカ経済はいちじるしい規模の拡張を続け、共和党政権の時代が続いた3。リンカーンの政党は、南北戦争の勝者としてアメリカの運営を担った。しかしその時代がたまたま経済的な発展の時代でもあったため、経済中心主義的な特徴を色濃く身につけるという運命にあった4。 このような政治的、経済的状況を背景にして、1800年代中頃からアメリカに登場した会計士は、多くの都市のさまざまな社会で結束して組織化を図り、会計士組織を創設した。ところで黎明期の会計士組織に倫理規則は存在したのであろうか。もし存在したのであればその内容はどのようなものだったのか。また、会計士業界の先駆者たちは監査人の独立性をどのように位置づけていたのであろうか。会計士の黎明期から1929年株式恐慌前夜まで会計士業界の組織化と自主規制の推進第1節 はじめに
元のページ ../index.html#18