第 1 章 会計士の黎明期から1929年株式恐慌前夜まで第 2 章 1929年株式恐慌から1930年代 第 3 章 1940年代におけるSECとAIAの攻防第 4 章 1950年代から1960年代中頃におけるSECとAIA(AICPA)の攻防 アメリカの会計士の黎明期である19世紀後半から20世紀初頭にかけて、会計士業界の指導者は、監査に関して、「廉潔性(integrity)」「非個人的(impersonal)」「準公的(quasi-public)」「独立した(independent)」「公平無私(disinterested)」「不偏不党(impartial)」などの表現を用いてその倫理責任を説いた。とりわけ監査人の特性として「integrity」が強調された。 民主党政権下の1933年5月27日に制定された証券法は、法として最初に独立性概念を明示的に取り入れた。その後、監査人の独立性概念の具体化に関してリーダーシップを発揮したのは証券取引委員会(SEC)であった。SECのRegulationは「反証可能な法律上の推定」という法律構造をもっており、SECは推定基盤である客観的基準を数多く策定することによって、監査人の独立性の規制強化を推し進めた。これに対し会計士業界は「精神的な独立性」を強く主張して規制強化に対抗した。 そして、会計士業界による自主規制と、SECによる規制が激しく競い合うことによって、1960年代中頃までに「財務上の利害関係」・「二重の関係」・「その他の関係および状況」に関して、監査人の独立性概念が生成されるに至った。──会計士業界の組織化と自主規制の推進──SECがリーダーシップを発揮した時代──客観的基準を強化するSECと 精神的な独立性を強調する会計士業界──攻めるSECと反転攻勢する会計士業界「財務上の利害関係」・「二重の関係」・「その他の関係および状況」第Ⅰ部独立性概念の生成
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